フッ素について

   

むし歯予防の分野でよく聞く言葉「フッ素」。特に、小児歯科においては柔らかくて虫歯になりやすい乳歯の歯質を強化する目的でよく使用されている化合物です。

フッ素の利用は、WHO(世界保健機関)をはじめ世界の150以上の保健関連団体がフッ素の安全性・効果を基にその利用を推奨しており、日本においても、日本歯科医学会や厚生労働省、日本口腔衛生学会などから虫歯予防に有効であると推奨されております。

しかしながらその一方で、フッ素の安全性に疑問を投げかける意見もあり、お母さま方の中にはフッ素利用について不安を感じている方もいらっしゃるようです。

このページでは、そんな皆様のフッ素の対する疑問や不安にお応えするため、フッ素のついての基礎知識や有効性、危険性などをまとめてご紹介させていただきます。


 

そもそも、フッ素ってなに?

フッ素とは、私たちの身近な自然界にある元素のひとつで、お茶や魚介類などに多く含まれています。

フッ素はミネラル(無機質)の 1 つで、カルシウムと同じように歯と骨の構成成分(構成素)であり、歯や骨の石灰化度を調節する働き(調節素)を持っています。

虫歯予防に欠かせないだけではなく、むし歯予防以外にも骨に対して有益な作用があり、適量のフッ素摂取により骨折や骨粗鬆症の予防が期待できます。

また、大動脈の石灰化を予防する作用もあり、結果的に冠動脈疾患(心臓疾患)による死亡率が低下するという報告あるほど大切な役割を担っています。


 

フッ素が虫歯予防に効果的な理由

1、再石灰化を促進

フッ素は、歯から溶け出したカルシウムなどが再び歯の表面に戻ろうとする作用(再石灰化)を助け、歯の修復を促進します。

2、歯質を強化する

フッ素が歯に取り込まれることでエナメル質を強化し、」さんに溶けにくい強い歯にします。

3、虫歯を抑制

フッ素の抗菌作用により、虫歯菌の働きを抑えさんの生産を抑制します。


 

フッ素の効果と使い方

フッ化物歯面塗布(予防効果:30~40%)

歯科医師や歯科衛生士がフッ素を歯の表面に塗る方法で、歯科医院や市町村の乳幼児健診などで行われています。
新しい歯が生えるのに合わせて年3~4回繰り返してフッ素を塗ると効果的です。

フッ化物洗口(予防効果:50~80%)

フッ素の入った液で1分程度ぶくぶくうがいをします。毎日、もしくは週に1回程度行います。
ブクブクうがいができるようになる4歳ごろから行えるようになります。

フッ素入り歯磨き剤(予防効果:20~30%)

市販のほとんどの歯磨き粉にフッ素が入っています。毎日のケアが大切です。


 

フッ素は危険と聞いたことがあるけど、大丈夫?

なんでもそうですが、決められた量以上に摂ることはよくありません。フッ素の場合、過剰摂取してしまうと、中毒を引き起こす場合があります。

フッ素による中毒は、主に急性中毒と慢性中毒にわけられます。


急性中毒

多量のフッ素を誤って一度に摂取した場合、急性中毒を引き起こします。
見込み中毒量は体重1kg当たりフッ素量5mgとされており、症状としては、悪心・嘔吐・下痢などが考えられます。

例えば、体重20キロほどの4-5歳児の場合、見込み中毒量はフッ素量100mgとなりますが、これは一般的なフッ化物洗口液(フッ素濃度225ppm)450ml(45回分)を一度に飲み込んだ場合に相当する量です。

洗口液450mlを一度に飲み込むことは現実的ではなく、実際の事故例は現在のところありません。


 

慢性中毒

フッ素の慢性中毒の症状としては、現在、骨フッ素症(骨硬化症)と歯牙フッ素症(斑状歯)が確認されています。

骨フッ素症(骨硬化症)

骨フッ素症(骨硬化症)とは、骨の形成に影響が出てしまう病気で、症状としては関節の痛みや硬直・脊髄や靭帯の石灰化などが挙げられます。
骨フッ素症は、インドなどの熱帯地方や中国の乾燥地帯でフッ化物濃度が高い飲料水を利用している地域での報告が多い症状で、>8ppm以上高濃度のフッ化物を含む飲料水を20年以上にわたり摂取し続けると、10~15%の確率で発症するといわれています。
日本では水道水の水質基準が定められており、フッ素及びその化合物は0.8mg/L以下と制限されています。


歯牙フッ素症(斑状歯)

斑状歯とは、歯の表面のエナメル質に白い斑点がみられたり、色素の沈着がみられたりする症状のことを言います。
斑状歯の原因はさまざまありますが、そのうちフッ素が原因で起こる斑状歯を「歯のフッ素症」といい、歯の形成される時期(生後~7,8歳)に、2ppm以上のフッ素を含む飲料水を継続的に摂取したことが原因とされています。
水や食物の摂取のより吸収されたフッ素は、成人であればその90%以上が尿として排出されますが、骨の成長期にあたる子どもの場合、その30~40%が骨の構成成分として取り込まれるため、過剰摂取による影響が出てしまうのです。


 

虫歯予防にフッ素を活用した場合のお口の中に残るフッ素の量は、歯科医院で行われるフッ化物歯面塗布など、高濃度のフッ素を使用した場合でも 1~1.5mgとされています。

いずれにしても、毎日飲み込むわけではないので慢性中毒の心配はありません。


 



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